COLUMNコラム

2026.02.16 雑記

正月と日本酒 「ハレの日」に立ち上がる需要

年末年始が近づくにつれて、日本酒売り場の空気が明らかに変わっていった。

普段は静かな棚に人が集まり、じっくりとラベルを眺め、価格を確かめ、箱を手に取る。

不思議なことに、日常的に日本酒を買わない層までが動き出す。

「正月は日本酒」。

この需要が想像以上に高かったことを、2025年末に思い知ったのでまとめておく。

価格帯は上がり、本数も伸びる

今回、一番興味深かったのは予算感。

インバウンド顧客を除いて、一般的には1,500円前後の商品が販売の主力となっているが、年末には3,000円〜10,000円の商品が飛ぶように売れる。

2,000円以下の商品であっても、数本まとめ買いして合計金額が伸びる。

1本10,000円代の商品を求める層も多かったが、ヨドバシカメラのラインナップではその金額に対応できる商品が薄かった。結果として8,000円前後の商品を買ってもらうことになったが、10,000円〜20,000円の価格帯を拡充しておけばもっと売上は伸びたと感じる。

ただ、30,000円以上になるとさすがに手が伸びる人は少なかった。

この価格帯は現時点では、「SAKE HUNDRED」の一人勝ちといった印象。

容量については四合瓶が中心。一升瓶を求める声はほとんどなかった。

ヨドバシカメラという立地や客層にもよるだろうが、家庭内で飲み切れる量としては四合瓶で十分という感覚が強いのかもしれない。

色々な種類を味わいたいという意識から、四合瓶を数本買うといった流れのほうが目立った。

量よりも「質」や「特別感」。そこに予算が向くのが正月だった。

選ばれる理由は「味」だけではない

普段日本酒を買わない人が、お正月で選びやすい銘柄の特徴は以下の通り。

・ラベルの華やかさ
・木箱や化粧箱の豪華さ
・名前のインパクト

贈答や手土産としての機能もあるが、それ以上に「場に映えるかどうか」が重視されている印象を受けた。

正月は大勢で飲む機会が多い。

すると、味わいの細かな違いよりも、話題性や見栄えが優先されるのかもしれない。

とは言っても、10,000円前後になると大吟醸クラスしかないのでどれを飲んでも大きく外すことはない。そう考えると見た目や名前での選択は間違えではないのかも。

お正月専用ラベル、ボトルにするだけでも大きく動きが変わりそうだと感じた。

飲めば、美味しいと思ってくれる

そしてもう一つ、はっきりしたことがある。

普段飲まない人でも、試飲を通して実際に口にすれば「美味しい」と言ってくれる。

また、味わいの好みは本当に人それぞれで、若いからといってフルーティ系が好みとは限らない。

辛口を好む若者もいれば、濃醇な熟成感を面白がる人もいる。

日本酒の味わいは本当に幅広い。

「若者だからフルーティ甘口」

「年配の方には辛口を」

こういったテンプレ的な提案ではなく、その人自身が求める香味を的確にヒアリングし、提示してあげる姿勢が販売側に求められると感じた。

ハレの日=サケ

今回、強く感じたのは行事と日本酒が今でも結びついていたこと。

「ハレの日には酒がある」という感覚は、日本人の中にまだ根付いている。

お正月の日本酒がいる。

日常で選ばれることが少なくなっていても、節目や儀礼の場面では自然に手に取られる。

精神性の根幹には、まだ日本酒が位置しているように思える。

では、なぜ普段は飲まれないのか…

なぜ正月だけなのか

いくつか考えてみたが、

・正月休みは翌日の仕事を気にしなくてよい
・昼から飲める環境が数日続く
・おせち料理との相性も良い
・帰省や親族の集まりがあり「みんなで飲む」必然性がある
・正月は日本酒という刷り込みがある

このあたりがざっくりとした理由だろうか。

一方、通常の連休は旅行、外食、イベントなどで予定が分散する。

正月ほど明確な「酒の時間」が確保されない。

つまり、日本酒と正月は文化的にも生活リズム的にも強く連動している。

正月というゆっくりとした時間そのものが、日本酒需要を呼び起こしているのかもしれない。

では、どうするか

正月にこれほど明確な需要が立ち上がるのなら、季節性をもっと前面に出すことが重要なのかもしれない。

正月酒は、思い切って値上げすることも可能である。

国内の顧客は日本酒対して「特別な予算」を用意している。

お正月に通年商品を売るのではなく、正月限定の物語、正月限定の装い、正月限定の体験を設計することで可能性が広がるような気がした。

おそらく、アルコール市場の中心に再び日本酒が返り咲くことは難しいだろう。

それでも「季節と行事に密接に結びついたお酒」というポジションは今後も揺るがないだろう。

これからは「売れないこと」に焦点を当てるのではなく、売れる瞬間をどう拡張していくかが重要なのかもしれない。

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